第66回アマ名人戦の県代表になった中平寧さんのコメントです。
夏、アマ名人戦県大会。
毎年この時期に思うことは僕にとって熱い夏を乗り切るために必要なのは鰻より将棋だということです(^^)。全国大会への切符を手にすることが夏を乗り切るための大きなエネルギー源というわけなのですが、倒した相手のことを思うとやっぱり複雑な心境です・・・。
それにしてもいくつかは酷い内容だった。
事前に準備はしたつもりだったし、自分のためにできることはやった。参加者として朝一番に会場に入り、お昼は弁当を棄権して軽いサンドイッチを買って軽食で済ませ、水分もこまめにとった。
くじ運は大事だ。「相手が誰であろうが倒していくしかない」、ということはわかっていても強い相手とはやはり最後の方で当たりたい。自分がそこに行くまでに相手が負けることを本気で期待しているわけではなく、モチベーションの問題。自分はスロースターターなので徐々に士気を上げたい、というわけです。
ベスト4に残ったメンバーはここ数年稀に見る実力者揃いだった。準決勝の対古崎戦を前にあと2勝がとても遠く感じた。この時のために約1ヶ月前から、やるか、やらないか迷っていた。居飛車を、だ。約3年半、対局数にして21局、全戦型相振り飛車の理をついに崩して3手目▲26歩を指した。
自分の中で何かを変えたいと思っていたからだろう、その瞬間だけは頭の中は空っぽだった。相手に失礼のないよう藤井システムに潰されないように準備はしてきたつもりだったし、持久戦になったときもそれなりに戦うつもりだったが、押さえ込まれて話にならなかった。対局中は辛いとか苦しいを通り越して恥ずかしいという気持ちで相手の手を待っていた。結果は勝ったもののもう一度指したいと思った。
決勝は山田さん。いつも朗らかで優しい山田さんが本気になった時の将棋は恐ろしく切れがいいことを僕は知っている。かつてアマチュア時代の吉田正和さんを山田さんが倒したときのことを思い出して「山田さんすげえ」と思った、というのをあの無口な鹿熊君が前につぶやいていたのをなんとなく思い出していた。自分も今まで盤上で味わわされた絶望はよく覚えている。
そして中盤、恐れていたことが起こった。受けて勝てると読んでいたところにタダ捨ての鋭い金を打たれ、受けが利かないことに気づいた。
呆然と局面を見つめる中で「玉を逃がす」という選択で致命傷は免れたがその後も苦しい局面が続いた。粘りに粘って最後は端に空中城を築き、反撃に転じて勝てた。終わったときは内心喜ぶ気力も無かったが、今思うと勝てて本当によかった。
終わった後の道端で桶屋さんと将棋の話を沢山した。人の将棋に対する考えを聞くのはとても有意義だと感じた。
将棋が強いというのは才能やセンスより、やはり努力や苦労、時間やお金を費やしてきたから強いのだと思う。
強い相手と本気で戦う時はいつもその人の努力の結晶を垣間見た気がした。